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味の素とバターごはん

1999年11月30日
先日、こんな記事を目にしました。

味の素は、国内で売るうまみ調味料「味の素」の生産を年内に海外へ移す方針を明らかにしたと。
おぉ、そうなのか?味の素よ、お前もか?と言う驚きがありました。味の素と言えば“おばあちゃん”の調味料と言う印象が強く、“海外展開”や“グローバル化”と言う言葉からは遠い存在のように思っていたからです。

しかし、記事によるとこうありました。

「味の素」は年間で60万トンを販売、その大半は海外向けが占める、と言うのです。そう言えば、我が家の食卓から、あの瓶が消えたのは、いつのことだったのでしょうか?

ボクが小学生の頃までは、我が家は6人家族でした。父・母・姉・祖父に祖母、そしてボク。そして当時、我が家で一番権力があったのは、父ではなく、明治生まれの祖父でした。食事のメニューも全て祖父向け。純和食。言い換えれば決して子ども向けではなかったのです。

「コッテリ感」とか「トロ〜リ感」が乏しい。
流石に、それでは食べ盛り、育ち盛りの孫が不憫だと思ったのでしょう。祖母が、ボクのご飯を「バターご飯」にしてくれたのです。

出来立ての湯気立つご飯の上に、バターを一片落とし、そこに醤油を垂らす。そして、さらに毎回「味の素」をサッサとかけてくれました。当時の我が家の食卓に並べられたおかずのことはあまり覚えていませんが、この「バターご飯」のことはよく覚えています。

白いご飯の上に、黄色のバター、そこにさらに白い味の素を振って、その上から濃い紫の醤油をかける。そして、その黄色のバターが、トロ〜リと溶けて、白いご飯、濃い紫の醤油と交じり合っていく。「美味しいか?」そう尋ねるおばあちゃん。「うん」と頬張りながら答えるボク。

しかし、母はその時、あまりいい顔をしていなかったかもしれません。子どもの食事に祖母が口出しするのを良しとしなかったからでしょうか?やはり、栄養の問題?中でも、塩分の問題?それとも、嫁姑の問題??いやいや、結局は家計の問題だったのではないでしょうか?

あの当時、バターは本当に立派な金属の容器に入っていました。高価だったんだろうな。そして惜しげもなく振られる味の素。でも、母は何も言わなかった。ボクはその横で「おばあちゃん、ありがとう!」と言っていたに違いない。ごめんね。でも今なら言うよ。「おかあちゃん、もちろん、ありがとう」と。

(By エッセイシスト・KUNI61)
更新日: 2015-09-01 07:50:41