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透明なカルピス

1999年11月30日
透明なカルピス

友人が集まった際、最近まず話題になるのが健康に関すること。
先日の宴会で、3つ年上の先輩が言いました。


「胸が一週間ほど痛くてね。病院で徹底的に調べてもらったけれど、特別悪いところ見つからなかった。何だったんだろうな」同じテーブルにいた友人は、笑いながら言いました。

「寝てる間に、奥さんが、先輩の胸を押さえつけていたんとちゃいますか?」
もう一人の友人は、小声で言いました。

「誰かが、先輩を模した人形の胸に、五寸釘を打ち付けていたんとちゃうかな?先輩、敵多いし」
慌てて、優しいボクはこうフォローしました。
「先輩!恋煩いとちゃいますか?そう初恋は、胸痛めますからね」



この話をきっかけに、話題は、病気の話から、初恋の話に・・・
行くことはなく、そのままカルピスの話となった。そうなのです。我々の世代は、初恋の味と言えば、カルピスなのです。

ボクの子どもの頃、すなわち、昭和の40年代から50年代と言うのは、夏の冷蔵庫の中で、このカルピスの存在と言うのは大きかったと思います。実際に、子どもの力からするとその瓶は重くて、なかなか冷蔵庫から持ち出せない。

さらに、その瓶はご丁寧に水玉の包装紙に巻かれていました。
子どもにとって、このカルピスは、もう特別な存在だったのです。



しかし、このカルピスは、また、残酷でもありました。
子どもの頃、我が家に遊びに来た友達は、おやつと一緒に出されたカルピスを見て、母親にこう言いました。
「おばちゃんちのカルピスって、透明ちゃうねんな」
母は聞きました。「君んとこのカルピスは白くないの?」
友達はこう答えました。

「白いけど、透明で、コップのこっち側から向こう側が見える。そう言う意味で透明っちゅうこっちゃ。おばちゃんちのカルピスは、白く濁ってて透明ちゃう。それにちょっと甘すぎるんとちゃう?」
母は笑って謝っていたような記憶があります。

「うちんとこのカルピスと、君んちのカルピス、種類ちゃうかもね。ごめんね、口にあわんもんだして」
友達は言いました。

「かまへん。かまへん、おばちゃん!かまへんで」
確かに昭和の話なのでありました。


(By エッセイシスト・KUNI61)
更新日: 2017-05-12 14:59:09