少し遅い怪談じみたお話。
まだ残暑厳しい季節と言うことでご容赦を。さらに「これが、思い出の食か?」と言われると、なおさら困ってしまうのですが、ある種、これも彼女にとっては思い出の食だったに違いないと言うことで、重ねて容赦を。
さて、お母さんを最近亡くしたと言う友人の話です。
「母が亡くなった数日後だったと思います。夢の中に母が出てきました。ボクは、夢の中で母に言ったのです。『おかん!おかんは、もう死んだんやで』すると、母はこう言いました。『大丈夫や!一回は出て来られるねん』って」
何ともユーモア溢れる(?)お母さん。天国にはそんなルールがあったのですね。さて、そんな友人のお母さんの夢の話をもう一席。
「次に出て来たときには、こう言ったんです。『食器棚のひきだし』って。
ボクはそこで目が覚め、ガバッと起きて、あまりに気になったもんやから、夜中やったけど実家の親父に電話して『今、夢におかんが出てきた。そして、食器棚のひきだしと言うてた。ひきだしに何かあるかも。ちょっと調べてみて』と言うたんです。
父も、すぐ調べてくれましたが、特別何もないで、と言うつれない返事でした。母親はわざわざ僕の夢にまで出てきてくれて何を伝えたかったんやろ。暫くは忙しくてそんな夢のことも忘れていたんですが、最近、実家に戻るついでがあったんで、そや、あの夢のこと、自分で確かめたろと思ったんです。
「おぉ、確かめたんですか?ひきだしには何か入っていたんですか?」
「はい!ありました!ありました!」
「何があったんですか?」
「はい!マクドナルドの優待券が2枚入っていました。おかんは、どんだけこの券に執着してたんやろと思いましたわぁ」
もう、大爆笑です。
しかし、この2月に母を亡くしたボクは、まだ一度も母親の夢を見たことがありません。以前も書きましたが、母は亡くなる4日前に「カツ」を食べ、3日前には「シュークリーム」を食べ、そして2日前には「鰻丼」を一口食べ、食べるだけ食べると「後顧に憂いなき」と言って彼岸の人になりましたので、現世には何も執着がないのかも知れません。
それにしても、「後顧に憂いなき」と言って、あっちの世界に行くと言うもの凄いなぁ。カッコいい!その時、母はどんな気持ちだったのでしょうか?ちょっと、聞いてみたい。そして、彼女の若き頃の思い出の食も、聞いてみたいな。あちらに行っても「一回は出て来られる」らしいので、その際に聞いてみることにいたしましょう。(笑)
(By エッセイシスト・KUNI61)
更新日:
2015-12-01 09:42:02